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はじめに~犬の幸せとは何か、人間なりに考える

出張訓練やペットホテル業務の中で、ドッグトレーナーとして私は日々様々な犬たちと出会ってきました。
今回お話ししたいこの「様々な犬たち」というのは、犬種や年齢のことではありません。
『様々な飼われ方をしている犬たち』を題材にして、かつ、ドイツの犬事情と交えて、様々な犬たちの幸せについてあらゆる角度からお話ししたいと思います。
私は数カ月の間ではありますが、動物愛護先進国のひとつして有名なドイツへ、知識向上の為何度か訪れ滞在したことがあります。
(昨年はイギリスへも赴き、ドイツと同じように町に溶け込む犬たち、現役で仕事をする犬たちにも会ってきました)

当然私よりもずっと長い間ドイツに住んでいる方々や、大学へ行き専門的に学んでいる方々が、書籍やインターネットを通じて皆さまに素晴らしい知識や情報を提供しています。
そんな中で私のちっぽけな経験の中から、どんな形でどのような内容を日本の愛犬家の方にお伝えしたらいいのか近頃考えておりました。
今回はその考えが少しまとまりましたので、真剣に犬の幸せについて一緒に考えていきましょう。
動物愛護先進国では、犬とどこで出会い育てていくのか

日本と動物愛護先進国のペットショップに対する認識の違い
日本で犬を家族に迎え入れるまでの流れは、ペットショップに赴き購入するという流れが一般的です。そのほかにも下記の流れがあります。
・知り合いの家で生まれたので引き取る
・ブリーダーから直接購入する
・愛護センターから引き取る
大体こんなところでしょうか。
日本では「ペットショップ」というものが普通に存在しておりますが、世界的にみるとペットショップに生きている犬猫たちを展示して売るということは良くないとされています。
最近では仔犬同士を同じ部屋に入れて兄弟犬たちと一緒に過ごしているような感覚で展示するお店が増えたり、小さすぎる仔犬を売らないためや、早朝から夜遅くまで展示するようなことがないようにするためにに動物愛護法が改定されたり、徐々に「良くない」という考えが浸透しつつありますが、これから犬を飼おうとしている方々にはまだまだ浸透していないのが現状です。
ペットショップではなく、ブリーダーから直接買うのが良いのか?
ではブリーダーから直接買うのが良いのか?というと一概にそうではありません。
ペットホテルで勤務していて、預けられた仔犬はまだ生後3か月に満たないのに「家に来て1カ月経ちました」という説明を受けたことがありました。
現在の動物愛護法で「56日に満たない仔犬は親犬や兄弟犬と引き離すべきではないので売りに出してはいけない」と定められています。
その時期を越えるか越えないかで即売りに出し即買い取るという構図ができてしまっています。
また、ブリーダーから直接購入した時点でガリガリに痩せていたり、すぐに体調が悪くなり病院通いとなった、という子たちも、出張訓練で目の当たりにしてきました。
ブリーダーは自宅でもできる仕事として成り立つので法の目や愛護センターの目をかいくぐることが容易な側面があります。
動物愛護先進国ドイツの犬の迎え入れ方
ドイツで犬を家族に迎えいれるまでの流れは大きく違うところがあります。
ドイツでは生きている犬猫を売るためのペットショップは存在しません。
法律でしっかりと禁止されています。
ペットショップはあくまでリードやフードなどを売るお店のことを指すのです。
犬を飼いたい人たちは地元に根付いている愛護センターTierheim(ティアハイム)に、まず足を運びます。


そしてここで声を大にしていいたいのが、決して「仔犬がほしい」という人が大半ではないということです。
日本でも同様ですが、ティアハイムにも捨てられてしまった犬や迷い犬など、小さくてかわいい仔犬ばかりがいるわけではありません(ちなみに猫や鳥やうさぎなど様々な動物もいます)。
そこである程度性格が固まった成犬を、どんな犬なのか十分に説明した上で譲渡されることが多く、その後はそのティアハイムや近所のドッグスクールで定期的にしつけのレッスンを受けることが「普通」とされています。
そしてただ「〇ヶ月経ったから期限だ」という理由だけで殺処分されることはありません。

「こんな犬を飼いたいのではなかった、できるなら手放したい」「こんなに大変だなんて誰も教えてくれなかった」「どこに相談したらいいのかわからない」という状況に陥りやすいです。
健康な仔犬、しつけされた成犬を迎え入れることができる場所が地域に根付いていて、しっかりしつけも学べるところがあるんだと、飼い主さんへの周知もしっかりされれば、犬を初めて飼うおうちに迎え入れられた犬を含め、きっとその犬たちは最期まで幸せでしょう。
犬の社会化とはなにか
日本とドイツでの犬と過ごしたり一緒に行動できる場所・環境の違い


ドッグカフェは愛犬と共に入れるカフェのことを指し、犬を飼っていない人はそこに足を踏み入れないことが多いでしょう。
そして普通のレストランやカフェでは補助犬以外はまず入ることはできません。
犬を飼っている人の大半がご自身の車を持っていて、犬を乗せることが多いでしょう。
なぜなら日本ではバスや電車に犬をそのまま載せることが難しいからです。
小型犬ならクレートに入れて持ち込むことができますが、大型犬はそもそも載せることができません。
十分楽しめないという「~できない」ことが多く、たまに犬がでかけられる場所があったとしても「そこでいい子にできるかしら」と心配がつきまとうものです。
それでは犬としたかったことが何もできない、せっかく犬を飼ったのに十分楽しめないという状況に陥っていりますし、犬自身も初めての場所や騒がしいところなどで大人しく振舞うことがより難しくなっていきます。
一方でドイツではお店のスタンスにゆだねており多くのレストランやカフェ(ホテルでさえも)犬と同伴することができ、その状況に慣れている犬はゆったりフセをしてお店が用意した水を飲みながらゆったり過ごせます。


大きなショッピングモールや本屋さん、お洋服屋さんなども同様です。(スーパーなどは不可)
電車やバスにも一緒に乗ることができ、行動範囲が広まります。
ドイツでは囲いのあるドッグランというのは珍しく、家の付近にある広い広い公園に、看板によって「ここからは犬OK」「ここからは子供だけ」と知らせれています。
あとは勝手に犬がNGエリアに入らないよう飼い主さんたちが責任を持って見張り、間違いを起こす前に犬に指示を送る姿勢がしっかりとあります。
犬の社会化レッスンに対する意識の違い

このようにドイツでは、犬の行動範囲が広いことからそれに対応した「社会化レッスン」がしつけ教室でよくなされます。
初めて同士の犬と合わせるコツや遊んでいるのかケンカしているかの判断をする目も養うことができます。
そして、初めての場所でもオスワリやマテなどの飼い主の指示に従う練習ができているので、自信をもって犬と一緒におでかけができるのです。



犬の習性やしつけの基本を知らずして犬に社会化をさせるのは困難です。
最低限の知識と、自信を持った頼れる飼い主さんと、いつどんなときも一緒にいられると、きっと犬は幸せでしょう。
犬が犬らしく生きれる環境づくり

そのペット用品、犬のためですか?それとも・・・
ドイツでは、ペットショップにはあらゆる大きさの犬に対応できるよう、首輪・リード・クッションに至るまで、大きさの種類が充実しています。
また、犬用の水飲み場や放置ウンチを無くすため専用ゴミ箱も存在しています。
更には犬税なるものが多くはウンチの清掃費用に使われます。
動物愛護法も厳しく、全体的に国自体が犬とその飼い主さんを管理しバックアップします。
そして何より犬の大きさに関係なく充実した生活が送れる環境が整っています。

洋服やリードを脱ぎ捨て大地を駆け回ることができて、色々な犬に出会える場所がたくさんあり、その中でしっかり自分の犬を管理できる「飼い主さん」になる為の機会が多くあります。
それに反して日本の施設や犬用のグッズは飼い主さん向けのサービスが多いのではないかと感じます。
可愛い服もキラキラしたリードも本当は必要ありません。犬のサイズにあったしっかりした使い勝手の良い道具が一番安全としつけの役に立ちます。
犬は人間の最良のパートナーであり、まぎれもなく家族ですが、でも、はき違えてしまってはいけません。
犬はあくまでも「動物」です。
ビックリするようなサービスや飼い主さんの為のグッズや集まれる場所もとても素晴らしいもので、私も利用しますが、まずは犬が犬らしく生きていける環境を作り上げることで、犬たちはもっと幸せになるでしょう。
「犬の幸せ」日本の良いところは?
大きく3つの事柄に対してドイツと比べて感じていることをここまでお話ししてきました。
- 動物愛護先進国では、犬とどこで出会い育てていくのか
- 犬の社会化とはなにか
- 犬が犬らしく生きれる環境づくり
日本は、国や社会の動物愛護に対する考え、体制、法律などがまだまだ行き届いていないのが現実です。
でも、私が日本で素晴らしいと思う事は、個々で感じている「犬の幸せ」への思いを個々でどんどん実行してという行動力があるということです。
野良犬や野良猫を個人的に保護している方々を知っています。
民間の団体を作りあげ、保護活動を行い譲渡までも行っている方々を知っています。
3・11のときには遠いところから現地へ赴き家族と離れ離れになった犬猫の保護をした方々をSNSで多く目にしました。
動物愛護法がもっと厳しくなるように、署名活動は続いています。
このように日本人に根付いている助け合いの精神を、犬たちにも反映させているのです。
なかなかできることではありません。
私はそんな日本の底力を信じて、ドッグトレーナーという活動を通して犬の幸せについての考えを広めていきたいと思います。

海外ではペットショップで犬や猫を売る事が良くない事とされている事は耳にしていましたが、
- 犬の受け入れ方
- 犬のしつけをする環境
- 犬の社会化に対する意識の違い
- 犬と暮らせる環境
など、動物愛護先進国の犬との接し方、考え方などとても参考になりました。
私たち犬の飼い主も、犬への理解を深め、犬と一緒に暮らす中で犬にとって何が本当に幸せなのか?を考える事はとても大切な事だと考えます。
今回、冨塚ドッグトレーナーが肌で触れた動物愛護先進国の姿を知る事で、その大切な一歩になった様にも思います。
日本とは違う動物への考え方、犬と暮らす環境の違いなど、とても勉強になりましたし、考えさせられました。
動物愛護先進国の犬との触れ合い方について、私達犬の飼い主は知っておいた方が良いなと感じました!